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太陽化学株式会社

「もう一度学ぶ乳化剤」
~第2回「乳化剤の種類・用途/使用温度における注意点」

インターフェイスソリューション事業部
研究開発グループ

1.はじめに

 乳化剤は、使いこなしが難しいと捉えられがちです。それは、乳化剤の種類が多く選択の基準が分からない、また乳化剤の組み合わせで効果が変わることもあり、組み合わせの最適解を求めるのが難しい・・・などの理由からではないでしょうか?乳化剤の選び方や使い方に関し、皆様に少しでも解決のヒントや情報として頂けるよう、「もう一度学ぶ乳化剤」と題し、記事を配信しております。第1回目は「HLB値の利用方法」についてお送りしました。今回は、①乳化剤の種類と用途についてと②乳化剤を使う際の「使用温度」における注意点やその技術背景 について、まとめました。

 

2.乳化剤の種類

 界面活性剤の特性として、一つの分子に親水基と疎水基の両方を有することがありますが、乳化剤は加えて、人が食して安全・安心なものでなくてはなりません。そのため、食品衛生法では食品添加物として限定しています。主な乳化剤を図1にまとめました。また合成される乳化剤において、その親油基となる脂肪酸は食用油を由来とするものでなくてはなりません(図2)。

 


図1

 


図2

 

3.乳化剤の用途

 乳化剤はその名の示す「乳化」に使用されることはもちろんですが、その他にも分散、起泡、消泡、湿潤、油脂・デンプン・タンパク質の改質の目的で広く加工食品に利用されています。油脂の改質については、乳化剤による油脂の増粘や固化など主に油脂の結晶化コントロールに関わる機能であると言えます。デンプンやタンパク質の改質に関しては、乳化剤との複合体形成が大きく関わっています。
 乳化剤の用途は、大別すると以下のように「界面活性能」と「界面活性能だけではない各種改質効果」と言えるでしょう。表1には乳化剤の種類と用途について、まとめました。
・界面活性能:乳化、分散、起泡、消泡、湿潤 ⇒ 表1
・各種改質効果:油脂・デンプン・タンパク質の改質、静菌剤、可塑剤 ⇒ 表2
 前者の目的であれば、まず表1を参考として乳化剤の種類を絞り、さらに目的に応じてHLB値で絞る、後者の目的であれば、表2を参考として選定頂くのが良いでしょう。

 
 


表1
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表2
[表を拡大する]

4.モノグリセリドとは?

 表1、2でも窺えるように高級脂肪酸モノグリセリドは適用範囲が広い乳化剤です。コストも他の乳化剤に比べ安価であり、また最も生産量の多い乳化剤でもあります。このモノグリセリドには、グリセリンと脂肪酸あるいはグリセリンと油脂の反応によって得られる「反応モノグリセリド」とナトリウム塩を比較的多く含む「自己乳化型モノグリセリド」、さらには「反応モノグリセリド」を分子蒸留によってモノグリセリド含量を90%以上とした「蒸留モノグリセリド」があります(図3)。

 


図3

5.モノグリセリドと水の作用

 この「蒸留モノグリセリド」を水系食品に使用される際に気をつけて頂きたいのが、「使用温度」です。図4に「蒸留固体モノグリセリド(ステアリン酸モノグリセリド、モノグリセリド含量95%、融点70℃)」を水に1%添加し、温度を上げていったときの状態の変化を示します。


図4

写真はビーカーに水とモノグリセリドを入れ、上から観察しているものですが、左の写真は水温が60℃の状態です。モノグリセリドは水面に浮遊しており、攪拌しても溶解・分散しておらず、放置すればまた表面に浮いてきます。中央の写真は、水温が60~70℃の状態で、これは牛乳状のきれいな分散液となります。右の写真はさらに加熱し水温が75℃以上とした状態です。こうなると、綿のような凝集物を生じ、水温を上げても下げてもこの状態を維持したままとなり、水に分散しなくなります。蒸留モノグリセリドを効果的に利用するのには、この中央の写真の状態が最も良いのです。つまり、モノグリセリドの融点より10℃下~融点付近となる水温で・分散頂くよう注意が必要です。
 このように温度が一つのポイントではありますが、工程によっては温度条件を制御できない場合もあるかと思います。その場合は、例えば油相の方への添加頂く、あるいは蒸留モノグリセリドではなく、反応モノグリセリドや自己乳化型モノグリセリドを検討されるのも良いでしょう。

6.乳化剤の結晶と液晶

 上記のように蒸留固体モノグリセリドの水への分散における温度の影響は、モノグリセリド自体の結晶状態あるいは液晶と呼ばれる分子会合体が要因となります。水への分散について各温度での状態をモデル図で示しました(図5)。60℃未満ではβ結晶と呼ばれる緻密な結晶であるものが、60~70℃ではα結晶と呼ばれるルーズな結晶に変化します。これは水に分散しやすく、乳化剤の能力を最も発揮しやすい状態となります。75℃以上では高粘性のゲル状を呈する各種の液晶に変化し、水に分散しにくいものとなります。こうした液晶の形成しやすさは、蒸留モノグリセリドの持つ構造とその純度に起因すると言えるでしょう。


図5

7.その他の乳化剤

 一方、液状の蒸留オレイン酸モノグリセリドは、使用温度によらず水へは分散しにくいので注意が必要です。蒸留オレイン酸モノグリセリドは、広い温度域において、水を取りこみ高粘性のゲル状を呈する液晶を形成します。そのため、蒸留オレイン酸モノグリセリドを使用する場合、水への分散は避け、油への分散させた方が良いでしょう。
 他にも使用温度に注意頂く乳化剤に親水性のショ糖脂肪酸エステルがあります。ショ糖脂肪酸エステルの水分散においては、40~50℃付近で分子会合体を形成し、高粘度となるので注意が必要です。
 また固形の親水性ポリグリセリン脂肪酸エステルを乳化目的に使用する場合には、その融点以上でよく水に分散させるのが常法です。この場合、融点以上に加熱してもモノグリセリドのようにゲル状物(液晶)を形成しませんので、使いやすいと言えます。ポリグリセリン脂肪酸エステルが液晶を形成しにくい理由について、その構造などの説明を交えて次回にご紹介したいと思います。
 第3回目となる次回は、上述の紹介に併せて多価アルコールなどの共存物質が乳化系および乳化剤に及ぼす影響について配信させて頂く予定です。

 

(2017年1月)

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