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健康を作る素材のチカラ

Vol.4 スポーツ貧血と鉄分 アスリートの貧血対策から学ぶ~スタミナ作りに鉄補給!

1.アスリートの体づくり

体は、食べたものから作られます。スポーツに必要な体づくりには、トレーニングだけではなく、食事や栄養も重要だという情報はここ数年で急速に広まってきました。プロ野球で活躍しメジャーリーグに移籍した選手の妻が、ジュニア・アスリート・フードマイスターという、アスリートのための食事学の資格を取って食事面から夫の健康を支えていたというのも記憶に新しい話です。

2.アスリートと貧血

アスリートの健康管理において、栄養士など栄養指導の専門家でも苦労するのが貧血対策だといいます。貧血はアスリートに多い内科的疾患として最もよくみられるもののひとつです。

貧血にもいくつか種類があります。
「希釈性貧血」、「運動性溶血性貧血」などは激しいスポーツをする人に多い貧血です。
「希釈性貧血」とは、循環血漿量の増加により発生する見かけの貧血のことです。運動やトレーニングをしはじめると、末端までの血液の循環を良くしようとして血液の液体成分である血漿を増やし血液を薄くしようとします。一方、ヘモグロビンの量はすぐには増えないため、ヘモグロビン濃度としては低くなってしまいます。希釈性貧血自体は一時的なものであるため、これに対して貧血の対策をする必要はないといわれています。
「運動性溶血性貧血」とは、足裏の衝撃により赤血球が壊れやすくなることで起こる貧血です。赤血球の寿命は通常120日程度ですが、脊髄で新しく作られることにより常に一定に保たれます。しかし、壊れてしまう赤血球の数が新しく作られる数を上回ってしまうと、血液中の赤血球が少なくなり、貧血となってしまいます。マラソンや駅伝など陸上の長距離、サッカー、バレーボール、バスケットボール、剣道など、足裏に衝撃の強いスポーツに特に多いといわれています。
スポーツ選手に限らず、臨床的に貧血と診断される中で最も多いのは鉄欠乏性貧血です。ただ、スポーツ選手の場合、一般人に比べて鉄を損失してしまう機会が多くあります。例えば、汗にはさまざまなミネラルが含まれますが、汗腺で分泌されてから皮膚の表面に出るまでの間に再吸収することが知られています。しかし、激しい運動で急激に汗をかくと、再吸収の仕組みが追いつかず、汗とともに体外へ排出されてしまいます。日常的にトレーニングを行うスポーツ選手であれば、1日にかく汗の量は一般人の何倍にもなると考えられるため、汗から損失する鉄の量も多いことは容易に想像できます。また上記で紹介した溶血性貧血では、尿に赤血球の中身であるヘモグロビンが見られる場合があります。そのような場合にはヘモグロビンとともに鉄も排出されてしまうと考えられます。また激しい運動により消化管から出血することも報告されています。


このように、スポーツ選手には貧血が起こりやすい条件が重なっています。しかし、なぜそこまでスポーツ選手にとってそれほど貧血が問題となるのでしょうか?それは、貧血が運動のパフォーマンスに深く関わっているからなのです。

3.鉄のはたらきとスタミナ

体内の鉄分は、大半がヘモグロビンとして赤血球の中にあり、酸素を運搬する役目を果たしています。持久系の運動の場合、エネルギーを作り出すために、はじめはブドウ糖を燃やし、その後、脂肪や筋肉中のグリコーゲンが使われエネルギーとなります。「有酸素運動」と呼ばれるとおりエネルギーの産生には酸素が必要であり、このとき全身に酸素を運んでいるのがヘモグロビンです。ヘモグロビンが多い方が効率よく酸素を運ぶことができるため、持久力のアップ、つまりスタミナの維持につながるのです。

冒頭に戻りますが、栄養の専門家をもってしても難しいといわれる貧血対策。合宿や寮生活などで、24時間365日の食事を専門家に管理してもらえる場合はともかく、1日に必要な鉄分を毎日食事だけから摂取するのはなかなか難しいことです。特にスポーツ選手の場合、損失する鉄が多いため、厚生労働省が定める食事摂取基準を超えた鉄を摂取することを進める専門家もいます。食事だけから摂れる鉄の量が足りない場合は、サプリメントなども活用も勧められています。

4.鉄強化による長距離選手の血液性状の変化

<試験方法>

18歳~22歳の健康な女子大学生の長距離競技者18名を対象に2008年7月より粉末状鉄サプリメント(「クッキンサプリFe」:太陽化学㈱製、1gあたり2mgの鉄を含有)を食事とともに摂取させました。摂取量は、各人の状況に合わせ決定しました。生化学的な血液性状の検査として赤血球数、ヘモグロビン濃度、へマトクリット量、MCV、MCH、MCHC、などの測定を実施しました。

<結果>

鉄サプリメント摂取前である2007年7月と9月のヘモグロビン値を比較すると、7月より9月の方が、有意にヘモグロビン値が低下していました。一方、摂取を始めた2008年7月と9月の比較では、ヘモグロビン値の低下は見られませんでした。また、鉄サプリメント摂取を開始して1年後の同月比では、有意にヘモグロビン値が上昇しました。

<考察>

7~9月は、暑さにより他の季節よりも発汗量が増えたり、夏合宿による強化トレーニングで血液への負担も大きくなったりとヘモグロビン値が下がる要因が多くありますが、鉄サプリメント摂取を開始した2008年の7~9月にはヘモグロビン値の低下は見られなかったことより、損失した分の鉄を補うことができたと考えられます。


ヘモグロビン量の比較


5.鉄摂取の落とし穴:過剰摂取には注意!

スポーツ選手にとって欠かせない鉄ですが、過剰摂取にも注意が必要です。その効果を過信し、ジュニア時代に大量投与した結果、逆に造血能力が衰えるなど、体に悪影響を及ぼしている例が出てきているという報道もされています。
鉄の摂取方法は、①食事 ②サプリメント・OTC薬 ③処方薬(経口) ④静脈注射 があげられますが、この中で最も注意が必要なのは④静脈注射 です。
鉄は、吸収性が低いことが知られています。非ヘム鉄が多い野菜など植物由来の鉄の吸収率は2~5%、ヘム鉄の多い動物由来(肉など)でも10~35%といわれています。一方、静脈注射の場合、直接血管へ入れるため吸収率は100%です。過剰な鉄が内臓などに沈着すると、肝機能障害や肝硬変、糖尿病などになる危険があります。鉄剤の種類によっては骨軟化症の恐れもあり、また体内の鉄が多すぎると、人体に必要なほかの微量元素の亜鉛などが吸収されにくくもなり、運動のパフォーマンスを上げるどころか健康自体を害してしまう可能性もでてくるのです。
貧血と診断された場合には、必要に応じて医師から③処方薬 または ④静脈注射 が処方されますので、医師の指示に従って服用しましょう。しかし、そうではない場合は、基本的には①食事 から摂るようにし、不足分を②サプリメント・OTC薬 で補うとよいでしょう。

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