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化粧品・化成品を支える研究と技術 化粧品・化成品を支える研究と技術 化粧品・化成品を支える研究と技術

αゲルで叶える、心地良いスキンケアラメラ構造がお肌の潤いを保ちます

「αゲル」という言葉、聞き覚えのない人も多いのではないでしょうか。αゲルは化学用語辞典にも掲載されていない、限られた分野で用いられる用語のようです。αゲルは、水と油両方の性質を持つ界面活性剤と水によるゲルネットワーク構造を形成しており1)、白色で高粘度のクリーム状の形態を呈します。
αゲルの中では界面活性剤がラメラ(層状)構造、すなわち規則正しく配列し、水相・油相が折り重なった構造をしています。この界面活性剤が作り出すラメラ構造によって、αゲルは水も油も多量に内包することができ、この特徴がスキンケア製品に対するαゲルならではの効果をもたらしてくれます。

スキンケア製品におけるαゲルの効果

従来からヘアケア製品等に使用されてきたαゲルは、高い水分保持能や特異な感触を持つことから、最近ではスキンケア製品にも応用されてきています。 αゲルをクリーム処方の基剤として用いる利点としては、

  • 様々な油を乳化できる
  • ゲル構造由来の強固な界面膜により、エマルションの安定性が向上できる
  • ラメラ状のゲルネットワーク構造により、肌の潤いを保ち乾燥を防ぐ効果が期待できる

といった点があげられます2)
一般的にαゲルはイオン性界面活性剤と高級アルコールから形成されるものとして知られていましたが、非イオン性界面活性剤のみからでもαゲルを形成可能であることが報告されています3,4)。非イオン性界面活性剤はイオン性界面活性剤よりも低刺激であることからスキンケア製品に好んで利用されています。

様々な油剤を乳化可能!サンソフトα-C

ポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)は代表的な非イオン性界面活性剤であり、水中・油中共に単分散飽和溶解度が低く5)、低濃度から界面活性能を発揮するため会合体を形成しやすい点や、実用的な温度範囲では曇点が観察されず温度安定性に優れている点6)が特徴です。太陽化学では、αゲルを低濃度で形成でき、かつ安定性にも優れたPGFEを主剤とするO/W型乳化剤製剤【サンソフトα-C】を開発しました。

化粧品で使用される代表的な油剤であるミネラルオイル、パルミチン酸エチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ジメチコンについて、クリームを調製し保存試験を行ったところ、室温 1ヶ月保存後も合一は見られませんでした。通常の乳化方法では油剤の種類によって適切な界面活性剤を選択する必要があるのに対し、サンソフトα-Cは、それが形成するαゲルのメリットを活かし、様々な油剤を安定的に乳化することが可能です。

図1 各種油剤クリームの顕微鏡観察

図1 各種油剤クリームの顕微鏡観察

安定性なエマルジョンを調製できます

サンソフトα-C/トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル/水=5/15/80 、10/30/60の二種類のクリームを調製し安定性評価を行ったところ、25℃及び50℃で1ヶ月間保存後、いずれも分離や合一は見られず、粒子径変化も観察されませんでした。さらに、化粧用クリームの課題になりやすい硬度安定性についても、高い安定性を示しました。
油の配合量によらずサンソフトα-Cは合一やクリーミングを抑制し、高い安定性を付与することが確認できます。

図2 サンソフトα-C配合クリームの粒子径変化

図2 サンソフトα-C配合クリームの粒子径変化

心地良さを測定してみました

PGFE系αゲル乳化物は、ポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤(POE系界面活性剤)系の乳化物と比べて使い心地が優れています。塗布後のなじみのよさ、優れた伸延性、べたつきのない保湿感…PGFE系αゲル乳化物からなるスキンケア製品は、心地良い塗広げ感を演出しつつ塗布後には皮膚の柔らかさを感じさせる、魅力的な物性を有します。

クリームのレオロジー評価:塗り広げやすさ

αゲルは静置状態では弾性体として振舞いますが、ずり応力を加えることで粘度が低下するチキソトロピー性を示すことが特徴です。これは、化粧品の“塗り広げやすさ”につながる重要な性質であり、αゲルを乳化系に使用するメリットとも言えます8)

図3 クリームのレオロジー評価と官能評価

図3 クリームのレオロジー評価と官能評価

動的粘弾性測定を行ったところ、サンソフトα-Cで乳化したクリームは明瞭な降伏点が観察されました。使い心地としては、クリームが肌上で崩れる瞬間がはっきりと実感しやすく、この感覚が塗り広げ時の心地良さに繋がると考えられます。実際の官能評価でも、のび・なじみが良く不快な感覚が少ないため、塗り広げやすさを感じるという結果が得られました。

クリームのトライボロジー評価:なじみやすさ

図5 クリームのトライボロジー評価

図5 クリームのトライボロジー評価

肌の上でクリームをなじませていく動摩擦測定では、その摩擦力の変化から肌へのなじみやすさを読み取ることができます。平均動摩擦係数が一定になった時の往復回数をクリームがなじんだ点とすると、POE系よりもPGFE系界面活性剤を使ったクリームの方がなじみの早いことがわかります。さらに、高級アルコールの代わりに脂肪酸モノグリセリドを使ったサンソフトα-Cでは、なじみを感じるタイミングがより早くなることが確認されました。

サンソフトα-Cで心地良いスキンケアを

PGFEは低濃度でもαゲルを形成でき、低刺激性を謳うスキンケア製品には最適な素材です。それに加えて様々な油剤に対応できる汎用性、そしてその使い心地の良さや安定性の高さなど多くのメリットを享受できるサンソフトα-C、少しでもご興味をお持ちの方はぜひ一度お問合せください。

参考文献

  • Junginger, H. E., et al., Pharmaceutisch Weekblad Scientific Edition, 6 141-149 (1984)
  • T. Iwata, Acc. Mater. Surf. Res., Vol. 1(No.30), 99-129 (2016)
  • 正木仁ら「最新・化粧品開発のための美容理論、処方/製剤、機能評価の実際」第36章(山下裕司・樋口智則・平尾哲二、技術教育出版, 392-403 (2018)
  • T. Okamoto, et al., J. Oleo Sci., 65(1), 27-36 (2016)
  • 橋本悟ら, Materiarl Technology, 20(5), 255-261 (2002)
  • H. Kunieda, A. Akahane, Jin-Feng and M. Ishitobi, J. Colloid Interface Sci., 245, 365 (2002)
  • 岡本亨, Netsu Sokutei 37 (3), 124-131 (2010)
  • 岩田俊之, ’’『化粧品科学へのいざない』シリーズ 第2巻’’第6章 ,薬事日報社, p156 (2018)

(2019年6月)

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