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乳化剤講座 乳化剤講座 乳化剤講座

【第2回】乳化剤の構造と特性

1.乳化剤の構造

乳化剤の分子は、水などに溶けやすい親水基部分と、油などに溶けやすい親油基部分を持っています。
そのために水にも油にもなじみやすいという性質があり、親水基部分は水相に、親油基部分は油相に混ざろうとするため、乳化剤は界面に作用するのです。

乳化剤分子の構造

乳化剤分子の構造

主な食品用乳化剤の親水基を構成する多価アルコール

乳化剤名 多価アルコール
グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド) グリセリン
ポリグリセリン脂肪酸エステル ポリグリセリン
ソルビタン脂肪酸エステル ソルビタン
プロピレングリコール脂肪酸エステル プロピレングリコール
ショ糖脂肪酸エステル ショ糖

各乳化系での乳化剤分子の状態

各乳化系での乳化剤分子の状態

親水基、親油基がそれぞれ溶けやすい相に向いて並ぶため、
水や油を粒子として取り込むことが出来ます。
このため、水と油が混ざり合った乳化状態を作り出すことが可能になります。

多価アルコールと脂肪酸のエステル化

グリセリン脂肪酸エステルを作るときのグリセリンと脂肪酸のエステル結合

食品用乳化剤は、脂肪酸のカルボキシル基と多価アルコールの水酸基がエステル結合しています。
このため、いずれも『○○脂肪酸エステル』という名前で呼ばれます。
※エステル結合:カルボキシル基と水酸基が脱水されて結合したもの

2.主な食品用乳化剤の構造と特性

日本で食品用乳化剤として使用できるのは、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、酵素分解レシチン等です。
この中で、特に良く使われる乳化剤について、どのような構造と特性をしているのか簡単にご説明します。

(1)グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)

グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)

親水基としてグリセリン、親油基として脂肪酸がエステル結合しているものです。安価で応用範囲が広いため、乳化剤の中では最も多く使用されています。
一般的な乳化を目的として使用される他、油脂の改質剤、デンプン食品の改質剤、起泡剤、消泡剤、日持向上剤などとして使用されています。

(2)有機酸モノグリセリド

有機酸モノグリセリド

モノグリセリドの水酸基にさらに有機酸(酢酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、ジアセチル酒石酸)が結合しており、それぞれに特徴があります。例えば、クエン酸モノグリセリドは耐酸乳化に優れ、また油脂の酸化防止剤の助剤としても使用されます。コハク酸モノグリセリドはデンプン、タンパク質に作用するのでパン生地調整剤として用いられます。

(3)ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンエステル)

ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンエステル)

ポリグリセリンとはグリセリン同士を脱水縮合したものですが、このポリグリセリンに脂肪酸をエステル結合したもので、グリセリンの重合度、脂肪酸の種類、エステル結合の数により親水性を示すものから親油性を示すものまで非常に幅広く、応用分野も様々です。一般的な乳化以外に可溶化剤、起泡剤、消泡剤、油脂の結晶調整剤、デンプン食品の改質剤、生地調整剤、コーティング剤、洗浄剤、日持向上剤などとして使用されています。
※縮合:2個以上の同一分子もしくは、異分子で新しい結合をつくること。

(4)ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(ポリグリセリンポリリシノレート)

ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(ポリグリセリンポリリシノレート)

リシノレイン酸は1個の水酸基をもった不飽和脂肪酸で、リシノレイン酸同士をエステル結合し縮合物を作る事ができます。この乳化剤は、その縮合リシノレイン酸とポリグリセリンをさらにエステル結合したもので、ヨーロッパではチョコレートの粘度低下剤として古くから使われてきました。また耐酸・耐塩・耐熱性に優れ、強力なW/O乳化剤として利用でき、水分の多いマーガリンや天板油などに使用されます。

(5)レシチン

レシチン

レシチンには大豆レシチン、卵黄レシチンなどがあります。レシチンはリン脂質で最も代表的なもので、トリグリセリドの脂肪酸1個がリン酸化合物と入れ替わっているものです。最近では、高度に精製したものや、酵素分解して機能をあげたものもあります。酵素分解レシチンは親水性が高く、O/W乳化をつくる他、タンパク質やデンプンに作用して改質することができます。

3.食品用乳化剤の応用分野

食品用乳化剤の応用分野はアイスクリームなどの乳製品、マーガリンなどの加工油脂、パン、ケーキなどのベーカリー食品、チューインガム、チョコレートなどの菓子および飲料など多岐にわたっていますが、いずれの分野においても安全性が優先され食品添加物として指定されたもので、規格基準が決まっているものしか使用できません。
また、乳化だけでなく、界面に作用するという特性をいかして様々な用途に使われています。

日本国内の乳化剤需要(2005年、当社推定 単位:トン/年)

グリセリン脂肪酸エステル
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
グリセリン脂肪酸
エステル
2,050 2,100 950 1,450 250
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
600 400 1,450 550 1,900
合計 11,700
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
モノグリセリド 1,900 1,900 900 1,000
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
350 400 1,400 50 1,400
合計 9,300
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
有機酸モノグリセリド 100 200 100 50
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
200 250 150
合計 1,000
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
ポリグリセリンエステル 50 50 350 200
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
50 50 300 350
合計 1,400
ソルビタン脂肪酸エステル
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
ソルビタン脂肪酸
エステル
450 300
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
300 450
合計 1,500
プロピレングリコール脂肪酸エステル
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
プロピレングリコール
脂肪酸エステル
750 100
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
50 100
合計 1,000
ショ糖脂肪酸エステル
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
ショ糖脂肪酸エステル 300 800 200
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
100 600 2,200
合計 4,200
レシチン
乳化剤の種類/食品の種類 洋菓子 パン アイスクリーム ショートニング
マーガリン
チョコレート
レシチン 100 1,000 50 900 900
チューインガム 麺類 豆腐 乳製品 その他
100 250 2,300
合計 5,600

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