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「パラパラ」の炒飯を作るには・・・たまごのキノウが効いている!
界面のおはなし③~身近な“界面”の現象を乳化剤メーカーの目線で解説します~

「本格的なおいしい炒飯といえばどんな炒飯?」と問えば多くの人が「パラパラの炒飯!」と答えるのではないでしょうか。ところが、お店で食べるあのおいしさを家庭で再現しようとすると、難しいことがわかります。よくあるのは、炒めているうちにご飯粒同士がべたべたとくっついてしまってダマのようになってしまう失敗です。

おいしい炒飯を作る一番のポイントは“炒める火力”と言われており、家庭用のガスコンロやIHではお店の味の再現は難しいのですが、それでも「プロの味を家で…!」という情熱から、色々なおいしい炒飯を作る工夫が知られています。代表的なものとしては、「予めたまごとご飯を混ぜておく」ことや更に「マヨネーズを混ぜる」ことなど、耳にしたことがあるのではないでしょうか。そのほとんどが調理工程中の界面コントロールを利用した裏技です。

そもそも「パラパラ」にならない原因って?

ご飯粒同士がくっついてしまう理由は、主にご飯の澱粉が溶出することが原因だと考えられています。ご飯を炒めているうちに、加熱された澱粉が溶け出し、それが接着剤のようになってご飯粒同士がくっついてしまいます。これでは粒同士が離れた状態のパラパラした状態にはなりません。
では、強い火力で炒めることでなぜパラパラの炒飯になるのか…その理由は以下のように説明できます。ひとつは、強火で短時間の加熱で済むことから、澱粉の溶出が少なくて済むから、もうひとつは、高温で炒めることで油の伸展性が高くなり、まんべんなくご飯粒の周りに油がコーティングされ、溶出を防ぎかつご飯粒同士を離すことができるからです。家庭の火力ではどちらも実現が難しいでしょう。

裏技で活用されている「たまご」

では、家庭でパラパラの炒飯を作る裏技では何に注目しているのでしょうか。よく知られた裏技では必ずといっていいほど「たまご」が出てきます。炒飯の具材としてよく使用される素材ですが、同時にパラパラ感アップのためのカギの素材でもあるのです。

たまごを炒飯の調理過程で投入するタイミングは、「炒める前にご飯と混ぜる」や「ご飯よりも先に油を敷いた鍋に投入」など様々なことが言われていますが、たまごとご飯を一緒に炒めることにより、ご飯粒がたまごでコーティングされた状態になります。たまごはたんぱく質を多く含んでいますので、加熱により凝固しつつご飯粒をコーティングし、ご飯粒からの澱粉の溶出を防ぐ役割があります。お店で食べるプロの炒飯でも、たまごは同様の役割を果たしています。

たんぱく質素材でコーティングすることがポイントとなると、「たまごではなく他のたんぱく質素材でも良いのでは?」と思う方もいそうですが、たまごに備わるある機能も炒飯のパラパラ感を実現できる要素のひとつです。その機能は「界面活性能」です。たまごには界面活性能を持つ成分が含まれており、炒め油の表面張力を下げて伸展性を上げることにより、ご飯粒の周りに均一に分散させ、効率的にコーティングすることが可能となります。

マヨネーズの利用もよく聞く調理の工夫ですが、こちらはどういうことでしょうか?マヨネーズはたまご・油・酢の乳化物です。油とたまごは既に良く混ざっている状態であるため、たまごと油を別々に加えて炒めるタイミングで混ぜるよりも効率的にご飯粒の周りを油でコーティングすることができそうですよね。このように、炒飯をパラパラに仕上げるために、調理工程中の界面コントロールをたまごの機能が助けています。

たまごの界面コントロール機能の正体とは?

これまでに紹介してきたたまごの界面コントロール機能は卵黄中のレシチンにより発揮されます。たまごは自然の産物の中では非常に優れた乳化力を持つ素材と言われていますが、レシチンはこの乳化力にも関わる成分です。乳化力の源は卵黄中の「脂質-蛋白複合体」である卵黄リポ蛋白ですが、リポ蛋白は、脂質成分を含みながらも水への分散性が非常に良い状態となっているため、卵黄中の界面活性剤成分であるレシチンが非常に活性の高い状態となっており、レシチン単独の乳化特性とは異なる挙動を示します。このたんぱく質・脂質・そしてレシチンが組み合わさって存在することで、たまごの乳化力が発揮されます。レシチンだけでも界面コントロールのカギの素材となり得ますが、たまごの場合はたんぱく質と脂質も関わることで、より幅広い機能を発揮することが可能です。

太陽化学では、たまごの機能性に着目し、長年研究を行ってきました。優れた乳化力をもつたまごですが、実は弱点もあります。

炒飯のパラパラ感にはたまごのもつ機能が一定の役割を果たしていますが、「火力」という課題をクリアしようと思うと、たまごの界面コントロール機能を最大限に発揮できるような工夫が必要になります。太陽化学では「たまご」に着目したり、はたまた「油の界面張力」に着目したり…様々な切り口でよりおいしい炒飯を実現する方法も考えています。
「パラパラ感って?」と思われる方は以下のおいしさ科学館コラムもご覧くださいませ。

(2019年2月)

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