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進化するクレンジングオイル。濡れた手でもすっきりメイクを落とせる理由
界面のおはなし②~身近な“界面”の現象を乳化剤メーカーの目線で解説します~

女性であれば多くの方が使用しているであろうクレンジング剤、「肌に優しい」「使用感が良い」「とにかくメイクがしっかり落ちる」など、自分のニーズに合ったクレンジングを使っている方もいれば、「色々な製品があるけど実はあまり違いがわからないで使っている…」なんて人もいるかもしれません。これからは男性も化粧をする人が増えてクレンジング剤を使う人も増えるかも?
違いを良く知らない人でも知っている特長といえば、TVCMなどで大々的に宣伝され、すっかり定着した「濡れた手で使ってもメイクが落ちる」ものではないでしょうか。従来のクレンジング剤は一般的に“乾いた手で使う”ことが必須でしたが、化粧落としは大抵お風呂で使うもの、わざわざ乾いた手を準備するのはそれなりに面倒なことです。
仕組みのひみつがわかれば商品選択の材料になるのかも?お風呂で濡れた手でも“しっかりメイクを落とす”ことができるクレンジング、そのひみつを覗いてみましょう。

濡れた手で使わない方が良いクレンジング剤って?

クレンジング剤には、オイル、クリーム、ミルク、ジェル、リキッド・・・など色々な種類がありますが、「オイルベース」か「リキッドベース」の2つに分けることができます。リキッドベースのものは肌への負担が少ないというイメージで人気がありますが、水が主成分であることから濡れた手で使用してもあまり性能は変わりません。また同時にオイルベースのものよりクレンジング力が劣ります。一般的に濡れた手で使うとクレンジング力が落ちるため、乾いた手で利用するようにと推奨されるのは「オイルベース」のクレンジング剤、つまりクレンジングオイルです。

キーワードは「油なじみ」と「乳化」

そもそもクレンジングオイルでどのようにメイクが落ちるのでしょうか。 まず、クレンジングオイルを手に取り、メイクを落とす箇所に馴染ませます。このとき、クレンジングオイルの油系成分とメイクの油性成分が馴染んで皮膚から浮き上がります。最後に水で洗い流すのですが、水で油分を流し落とすには水と油も馴染みが良い必要があります。油の成分同士が良く馴染むのは当たり前ですが、水と油は通常は馴染みが悪いので、クレンジングオイルには水と油が混じり合いやすいようにするための成分の「界面活性成分」が含まれています。水の中に油が混じる、つまり「乳化」することで、皮膚から油分を流し落とすことができます。界面活性成分には、O/W(Oil-in-Water)乳化に適したものが利用されています。

クレンジングオイルでメイクを落とすメカニズム(乾いた系の場合)

クレンジングオイルでメイクを落とすメカニズム(乾いた系の場合)

では、手や顔にもとから水がついていたらどうなるでしょうか。クレンジングオイルは水と馴染みやすいので、手についていた水と乳化してしまいます。こうなると、油がメイクの油系成分と馴染みにくくなってしまい、クレンジングの機能が発揮されません。

濡れた系でクレンジングオイルのメイク落ちが悪くなるメカニズム

濡れた系でクレンジングオイルのメイク落ちが悪くなるメカニズム

濡れた手でも使えるには「手に付いた水がどうなるのか」が肝心!

それでは、濡れた手でも使えるクレンジングオイルはどのようなひみつがあるのでしょうか。ポイントは、少量の水を混ぜた際に油が水に包み込まれる「O/W乳化」が起こらないことです。乳化が起こらず、水と油が層状になった状態になることで、水が混ざっても油を皮膚上のメイク成分と馴染ませることができます。
クレンジングオイルには界面活性成分が疎水基を外側に親水基を内側にしたミセル状に分散しています。ここに少量の水が入り込むと、ミセル状の界面活性成分に水分子が包み込まれた状態になります(逆ミセル)。更に水分が入り込むと、逆ミセルの状態から油と水の連続層が不規則に重なり合ったような、いわし雲のような状態になります(バイコンティニュアス構造)。一見、不安定そうな構造ですが、油層と水層の間に界面活性成分が並ぶことにより、安定な状態を保っています。この構造も逆ミセルも「油が外側の層」という状態であるため、メイクの油系成分と馴染ませることができるのです。

濡れた系でもクレンジングオイルでメイクを落とすメカニズム

濡れた系でもクレンジングオイルでメイクを落とすメカニズム

洗い流すときには、オイルに大量の水が加えられることによりバイコンティニュアス構造がO/W乳化の状態に変化します。この時、バイコンティニュアス構造下では油の界面張力が非常に低くなっていることから、O/Wの粒子サイズが非常に小さくなり、乳化液のように濁った状態ではなく半透明になります。この状態は、乳化でできる粒より小さく安定です。このことから、洗い流し時に通常のクレンジングオイルよりも皮膚上に残る油成分が少なくなり、さっぱりとした使い心地になることも特徴です。

この差はどこから?

水が混じるとクレンジング力が落ちるか落ちないか…その違いは主に「界面活性成分」の性質によって左右されます。界面活性成分とひと口に言っても種類はたくさんありますが、上記のようにバイコンティニュアス構造を取ることができる界面活性成分は限られています。同じ種類の水系成分と油系成分で構成される系であっても、界面活性成分の種類が変われば最終的な状態に至るまでに取る構造も変化しますし、O/W乳化での粒子径も変わります。 また、このクレンジングオイルの例では、「油に界面活性成分が溶けている状態に水を加えていく」というプロセスで最終的にO/W乳化に至っていますが、O/W乳化の作成手法として一般的なのは「水に界面活性成分を溶解してそこに油を加えていく」方法であるように、乳化のプロセスも様々です。
「手が濡れていても使えるクレンジングオイル」は、界面活性成分の選択と乳化のプロセスの選択という、上手くバランスを取った界面コントロールの上に成立っています。このように、界面を上手にコントロールすることで、食品でも化粧品でもさらに新たな革命的な製品の開発ができるのではないか、と期待したいところです。

太陽化学は食品用乳化剤から始まった界面コントロールを得意とする会社ですが、化粧品分野でも安心して利用できる食品添加物グレードの界面活性成分をはじめ、多様な原料をご用意しております。化粧品分野では処方のご案内もさせていただきますし、食品分野と化粧品分野のどちらにも携わる企業として、一方の分野の技術をもう一方へ応用することにも積極的に取り組んでいます。

(2018年12月)

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