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チョコレートと化学工業製品の意外な共通点とは?
界面のおはなし④~身近な“界面”の現象を乳化剤メーカーの目線で解説します~

チョコレートと化学工業製品。固形になること、工場で製造できること…、ほとんどこれといった共通項の見当たらないこの二者、実は“界面”の世界から見ると、うっすらとつながりが見えてきます。
それは、界面活性剤が私たちの生活におけるこれら製品の活躍に一役買っている、ということです。一体どのように界面活性剤が関わっているのでしょうか?

チョコレートの原材料を見てみると…

特別なときにしか買えない有名なショコラティエの高級ショコラから、駄菓子屋の昔懐かしいお手頃なチョコレート菓子まで。私たちの日常生活には、いたるところにチョコレートが存在しています。表示されている原材料を見てみると、「乳化剤」すなわち界面活性剤を意味する文字が入っているものも多く販売されています。
チョコレートに添加されている界面活性剤の多くは、チョコレートの粘度を下げて加工しやすくするために使われています。チョコレートを使ったお菓子を作る際に、レシピによってはどろどろ過ぎてうまく泡が抜けなかったり、型にきちんとおさまらなかったり、さらには溶かした容器側にチョコレートがこびりついてしまい取りきれなかったり…、様々に苦労した経験がある人もいるのではないでしょうか。
工業的にチョコレートを使うとなると、この粘度の高さは「品質を一定に保ち、収率を上げたい!」という工場の切なる願いに逆らうかのように、一層厄介な問題になってきます。そこで活躍するのが、界面活性剤なのです。

砂糖のような親水性の素材をチョコレートに加えると、親油性のチョコレートよりも親水性の素材同士の方がなじみやすいため、それら同士でつながり合ってしまいます。この親水性素材同士のネットワークによってチョコレート全体の粘度が上がってしまうため、処方や工程によっては溶かしたチョコレートが扱いにくい物性になってしまう、という現象が発生します。
そこに親水性と親油性どちらの性質も持った界面活性剤を入れると、親水性素材の表面に界面活性剤がくっつくことで親水性素材同士のネットワーク形成を阻害し、個々の素材を分散させ、かつその状態を保つことができます。結果として全体の粘度が下がり、加工に適したチョコレートとなるわけです。
こうした界面活性剤の働きがなければ、混ぜられない素材や工業化できない工程もあったはずです。界面活性剤のおかげで世の中にこれだけチョコレート菓子のバリエーションがある、と言っても過言ではないでしょう。

コンクリート×「粘度を下げる」

化学工業製品でも、チョコレートと同じ「粘度を下げる」目的で界面活性剤が使用されていることがあります。
例えば、コンクリート。工事現場でミキサー車から液状のコンクリートが出てくる光景などから、コンクリートが液状にもなりうることは広く知られています。この状態は生コンクリートとも呼ばれていて、水とセメント、さらに骨材と呼ばれる砂や石などが混ぜ合わさった状態です。コンクリートの基本は水とセメントとの反応であり、この反応によって時間とともに凝固していきます。水とセメントはどんな比率でもよいわけではなく、適度な配合バランスがあるのですが、その配合では流動性がないため、運んだり塗り付けたりと作業をするには難しい物性になってしまいます。だからといって水を増やして扱いやすい物性にしようとすると、配合バランスが崩れ、出来上がりのコンクリート自体が劣化しやすくなっていきます。

ここで、界面活性剤の出番です。
セメントは水に接すると、より親和度の高いセメント同士がくっつき合うため、粘度が高くなります。コンクリートに用いられる減水剤と呼ばれる界面活性剤は、セメント粒子の表面にくっついてセメント粒子同士のネットワークを阻害して分散させ、粘度を下げる役割を果たします。セメントに界面活性剤を入れることで、セメントと水の比率を変えすぎることなく粘度を下げ、強度を保ったまま作業を滞りなく行うことができる、ということです。この働き、まさしくチョコレートの話と同じですね!

プラスチック×「分散させる」

界面活性剤を用いて「分散させる」という意味では、プラスチックもチョコレートと共通点があります。ほとんどのプラスチックには、表面が親水性である無機フィラーと呼ばれる充填剤が含まれており、その種類・かたち・大きさ・組み合わせなどによって様々な市場のニーズに応じたプラスチック製品を作ることができます。補強や軽量化、遮音性・導電性付与、耐熱性向上などなど…無機フィラーによってもたらされる効果は、挙げていけばきりがないほどです。一般的に知られている言葉ではないですが、今や普通の日常を送る上でも欠かせない存在と言えるでしょう。
この無機フィラーも、界面活性剤がなければ今日のような活躍できなかった素材の一つです。それは、チョコレートやコンクリートと同様に、無機フィラーはそれそのもののみをプラスチックに混ぜ込んだだけでは課題が出てきてしまうためです。例えば、プラスチックにうまく混ざらずにそれら自体でくっつきあってしまったり、初めはばらばらになっていっても時間をかけて身を寄せ合ってしまったりと、無機フィラーを均一に混ぜて状態を保ち、十分な効果を発揮させることは容易ではありません。界面活性剤を入れることでようやく、無機フィラーの分散性を向上させ、そのプラスチックに対する効果をしっかりと発現させることができます。界面活性剤の存在が実は、今の私たちの生活をよりよいものにしてくれている縁の下の力持ちなのです。

界面活性剤は、食品以外でも活躍の場を広げています

今回お話ししたものはほんの少しの例であって、異なる分野で同じ目的で扱われている界面の世界というのは意外と身近なところに広がっていたりします。界面活性剤に限ったことではありませんが、何かに困ったら、異分野での使われ方に目を向けてみると新たな視点が開けるかもしれません。

(2019年7月)

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